08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) 第11回授業:授業内容Q&Aなど
2009/01/13/Tue
すっかりアップが遅くなりました。
この日メインで扱ったトピックは「仕事とストレス、メンタルヘルス」でした。
授業内容に関連してみなさんからいただいた質問、および私が紹介しておきたい感想などをご紹介します。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q1
Q:ストレスというと心理学と全く関係ないと思っていましたが、そんなことないということが分かりました。
A:ストレスという概念を今のような形にしたセリエという人は医学畑の人ですし、また現在も、病気との関連という点から医学の領域での扱いが一般によく知られていると思います。しかし、とりわけ“ストレスがたまる”といった表現で使われるストレスという言葉は多分に“心理学的”なもので(たとえば「ストレス・ウイルス」のような目に見えるものはない)、1960年代後半からの心理学者の研究が大いに影響しています。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q2
Q:ガイアの夜明けの冒頭で会社でのストレスによって自殺する人が2002年の調査で70万人以上もいると言うことを知り驚きました。
A:おや、どこかで聞き間違えたのでしょうね。自殺者がそんなにいたら大変でしょう。現在、日本で自殺による死亡者数は年間3万数千人です。
ただ、ストレスの症状を訴える人が非常に多い、ということは確かです。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q3
Q:ここまで「心の問題」にも目を向けるようなビジネスが成立してしまう社会になっているのは、喜ばしい事ではあるのですが、手放しで喜べる状況ではないですよね…。
A:確かにそうかもしれません。資本主義の世の中ですから何でもビジネスになってしまうのですが、多くの人が“心の問題”のためにお金を払わねばならなくてもよい世界の方が、幸せな世界だと思います。マイナスになった状態を元に戻すためにお金を使うということなので。
また、少し視点が違ってしまいますが、“問題の心理化”にも気をつけなくてはいけません。たとえば「うつ」という心の状態(症状)が問題であるとしても、なぜその症状が(少なくない人たちに)生じるのかといえば、そこに何らかの状況的要因があるからです。症状を軽減するのは単なる対症療法であり、真に変えるべきものはしばしば状況の方にあります。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q4
Q:企業側からしてみれば、景気が悪化していく中で、人件費を出来るだけ削減し、限られた人員の中で成果を上げなければならない、この現状で職場環境が悪化してしまうのもわかることです。国が、この問題に取り込んだ所で、もっと経済全体が良い方向に進まない限り解決にはいたらないと思う。
A:確かにそういった面はありますが、もう少し具体的な対策を考えるうえでは、問題をあまりマクロ化しない方がよいでしょう。経済全体が悪い(不景気である)とどうしようもないというのではなく、その条件のもとでどんな改善が可能かを考えた方が生産的ですよ。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q5
Q:ビデオでも見たが、人事担当者を集めたセミナーやうつ病の防止策、また「過労自殺」が労災認定されたというように、ストレスを個々の問題とは考えないで、会社ぐるみで対策を進めていくべきだと思った。
A:そうですね。会社という1つの組織の中で生じている問題が数多くあります。組織を変えることがその構成員である個人を変えることにつながるでしょう。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q6
Q:“うつ”という症状の位置づけは、自分がうつだと感じた時なのでしょうか?それとも、カウンセリングや通院により勧告された時初めてうつであると言えるのでしょうか?
A:症状としての“うつ”は個人が主観的に感じるもの、病気としての“うつ”は診断の結果としてそれが認定されるものです。この違いは大きいので、両者を混同しない方がいいですね。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q7
Q:相手の悩みを聞くカウンセラーが一番ストレスを感じているのではないだろうか。カウンセラーはどうして耐えられるのか。ひょっとして一番うつ病になりやすい職業はカウンセラーなんじゃないだろうか。気になった。
A:カウンセラーももちろんストレスを感じますよ。ただ、プロのカウンセラーになる前の段階では、そのような「話しを聴くことによる自分自身への影響」についての知識と、それへの対処を学んでいるべきです。現在のところ国家資格としての「カウンセラー」という仕事は存在しませんが、たとえばそれに近い職種としての「臨床心理士」の養成カリキュラムには、そのような側面が考慮されているはずです。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q8
Q:役割葛藤は、中間管理職の人にもあると思いました。上司と部下にはさまれて、身動きのできない状況もあてはまるのではないでしょうか。
A:そうですね。役割葛藤はトップマネジメントよりもミドル、つまり上からの指示とそれ以外の要請との両方を考慮しなくてはならない、という立場の人の方に多いと考えられます。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q9
Q:仕事に関する話の中で“うつ”の話をよく聞きます。テレビの番組内で取り上げられることも、珍しい光景ではなくなったし、家族間・バイト先などでの会話の中で耳にすることもしばしばある。それだけ、頻発している、身近なものなんだと改めて感じます。…これは、ストレス反応による疾患の度合いを左右する要因の影響が大きくなっているからなのでしょうか。社会人のそうした問題を対処する力が弱くなっているからなのでしょうか。それとも…両方?
A:端的に言えば「両方である」というのが答えでしょう。個人の側にも社会の側にも原因になり得るものがあると思います。
ただ、個人の側にそのような原因(対処する力が弱くなった)が想定されるとしても、それはまさに「その人」に原因があるというよりは、その人が生きている社会によって形作られてきたものです。だから「弱いからその人が悪い」という指摘をしても意味がありません。
なお、ストレスの問題については特にそうなのですが、実態として過去には問題がなく最近になって問題が“生じてきた”というよりは、実態としては以前から存在していたものに対して、それを「問題であると言うことが許容される」ようになってきた、という側面の方が強いのではないかと思います。
この日メインで扱ったトピックは「仕事とストレス、メンタルヘルス」でした。
授業内容に関連してみなさんからいただいた質問、および私が紹介しておきたい感想などをご紹介します。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q1
Q:ストレスというと心理学と全く関係ないと思っていましたが、そんなことないということが分かりました。
A:ストレスという概念を今のような形にしたセリエという人は医学畑の人ですし、また現在も、病気との関連という点から医学の領域での扱いが一般によく知られていると思います。しかし、とりわけ“ストレスがたまる”といった表現で使われるストレスという言葉は多分に“心理学的”なもので(たとえば「ストレス・ウイルス」のような目に見えるものはない)、1960年代後半からの心理学者の研究が大いに影響しています。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q2
Q:ガイアの夜明けの冒頭で会社でのストレスによって自殺する人が2002年の調査で70万人以上もいると言うことを知り驚きました。
A:おや、どこかで聞き間違えたのでしょうね。自殺者がそんなにいたら大変でしょう。現在、日本で自殺による死亡者数は年間3万数千人です。
ただ、ストレスの症状を訴える人が非常に多い、ということは確かです。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q3
Q:ここまで「心の問題」にも目を向けるようなビジネスが成立してしまう社会になっているのは、喜ばしい事ではあるのですが、手放しで喜べる状況ではないですよね…。
A:確かにそうかもしれません。資本主義の世の中ですから何でもビジネスになってしまうのですが、多くの人が“心の問題”のためにお金を払わねばならなくてもよい世界の方が、幸せな世界だと思います。マイナスになった状態を元に戻すためにお金を使うということなので。
また、少し視点が違ってしまいますが、“問題の心理化”にも気をつけなくてはいけません。たとえば「うつ」という心の状態(症状)が問題であるとしても、なぜその症状が(少なくない人たちに)生じるのかといえば、そこに何らかの状況的要因があるからです。症状を軽減するのは単なる対症療法であり、真に変えるべきものはしばしば状況の方にあります。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q4
Q:企業側からしてみれば、景気が悪化していく中で、人件費を出来るだけ削減し、限られた人員の中で成果を上げなければならない、この現状で職場環境が悪化してしまうのもわかることです。国が、この問題に取り込んだ所で、もっと経済全体が良い方向に進まない限り解決にはいたらないと思う。
A:確かにそういった面はありますが、もう少し具体的な対策を考えるうえでは、問題をあまりマクロ化しない方がよいでしょう。経済全体が悪い(不景気である)とどうしようもないというのではなく、その条件のもとでどんな改善が可能かを考えた方が生産的ですよ。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q5
Q:ビデオでも見たが、人事担当者を集めたセミナーやうつ病の防止策、また「過労自殺」が労災認定されたというように、ストレスを個々の問題とは考えないで、会社ぐるみで対策を進めていくべきだと思った。
A:そうですね。会社という1つの組織の中で生じている問題が数多くあります。組織を変えることがその構成員である個人を変えることにつながるでしょう。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q6
Q:“うつ”という症状の位置づけは、自分がうつだと感じた時なのでしょうか?それとも、カウンセリングや通院により勧告された時初めてうつであると言えるのでしょうか?
A:症状としての“うつ”は個人が主観的に感じるもの、病気としての“うつ”は診断の結果としてそれが認定されるものです。この違いは大きいので、両者を混同しない方がいいですね。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q7
Q:相手の悩みを聞くカウンセラーが一番ストレスを感じているのではないだろうか。カウンセラーはどうして耐えられるのか。ひょっとして一番うつ病になりやすい職業はカウンセラーなんじゃないだろうか。気になった。
A:カウンセラーももちろんストレスを感じますよ。ただ、プロのカウンセラーになる前の段階では、そのような「話しを聴くことによる自分自身への影響」についての知識と、それへの対処を学んでいるべきです。現在のところ国家資格としての「カウンセラー」という仕事は存在しませんが、たとえばそれに近い職種としての「臨床心理士」の養成カリキュラムには、そのような側面が考慮されているはずです。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q8
Q:役割葛藤は、中間管理職の人にもあると思いました。上司と部下にはさまれて、身動きのできない状況もあてはまるのではないでしょうか。
A:そうですね。役割葛藤はトップマネジメントよりもミドル、つまり上からの指示とそれ以外の要請との両方を考慮しなくてはならない、という立場の人の方に多いと考えられます。
08.12.17「産業・組織心理学」(SUAC) Q9
Q:仕事に関する話の中で“うつ”の話をよく聞きます。テレビの番組内で取り上げられることも、珍しい光景ではなくなったし、家族間・バイト先などでの会話の中で耳にすることもしばしばある。それだけ、頻発している、身近なものなんだと改めて感じます。…これは、ストレス反応による疾患の度合いを左右する要因の影響が大きくなっているからなのでしょうか。社会人のそうした問題を対処する力が弱くなっているからなのでしょうか。それとも…両方?
A:端的に言えば「両方である」というのが答えでしょう。個人の側にも社会の側にも原因になり得るものがあると思います。
ただ、個人の側にそのような原因(対処する力が弱くなった)が想定されるとしても、それはまさに「その人」に原因があるというよりは、その人が生きている社会によって形作られてきたものです。だから「弱いからその人が悪い」という指摘をしても意味がありません。
なお、ストレスの問題については特にそうなのですが、実態として過去には問題がなく最近になって問題が“生じてきた”というよりは、実態としては以前から存在していたものに対して、それを「問題であると言うことが許容される」ようになってきた、という側面の方が強いのではないかと思います。



